2012年5月25日金曜日

韓国型ロケットは2021年に打ち上げられるのか?

_




朝鮮日報 記事入力 : 2012/05/25 13:54
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/05/25/2012052501281.html

ロケット開発、日本では民間企業が主導
韓国は航宇研の独占構造で技術が低迷


教育科学技術部(省に相当、以下教科部)は昨年5月、2021年までに韓国が独自技術で打ち上げる韓国型宇宙ロケット事業を、航空宇宙研究院(航宇研)から切り離すことを決定した。
航宇研から独立した形で、事業団主導で推進する方針へと切り替えたわけだ。

事業団長は公募で選び、団長には事業団の運営に必要な人事および組織運営、予算執行を含むロケット開発過程の全権が付与される。
事業団長は、事業団に参加する企業や大学の役割を定め、資金を配分・管理する責任も負うことになる。

1989年以来20年以上にわたりロケット開発に携わり、宇宙ロケット「羅老号」の打ち上げ経験を持つ航宇研を排除し、企業・大学が参加する「開放型独立事業団」体制を韓国政府があえて選んだ理由は何か。
教科部側は
「羅老号の打ち上げ事業を航宇研が独占的に推進してきたことで、韓国国内の産業界や学界の力量を総結集するという面で不十分なところがあった。
韓国型ロケットの開発を成功裏に推進するため、航宇研中心の開発体制から脱皮することにした」
と語った。
航宇研にこのままロケット事業を任せていては、成功を楽観できないという意味だ。

実際、これまでロケットや衛星の開発過程で、航宇研はシステムの統合や総括、設計など中心的な過程を独占してきた。
事業に参加した各企業は、単純な部品供給や組立業者という立場から脱し切れなかった。
民間企業がロケット技術を蓄積できるチャンスが初めから閉ざされ、技術開発も停滞状態だ。
90年代以降、韓国政府は兆単位の予算(現在のレートで1兆ウォン=約671億ウォン)をロケット開発に投入したが、それでも韓国の手では小型衛星一つすら打ち上げられずにいる。
韓国政府は、航宇研の閉鎖的かつ独占的な研究体制が、その主な原因だと判断したわけだ。

日本では、ロケット開発の初期から、政府と民間が共に成長する構造が形成されていた。
日本の「ロケット科学の父」と呼ばれる故・糸川英夫博士が、1955年に初のロケット(固体燃料ロケット)を製造したときも、民間企業が事業に参加した。
70年代に液体ロケットを開発した時も、米国から技術移転を受けたのは、日本政府傘下の宇宙開発事業団(NASDA)ではなく、民間企業の三菱重工業だった。

民間企業は、放漫な政府機関とは違って費用管理が徹底しており、開発費用を大幅に抑える効果もある。
最近打ち上げに成功した米国初の民間ロケット「ファルコン」(スペースX社)が、その代表例だ。
同社が開発したロケットの価格は、1基6000万ドル(約48億円)。
米国航空宇宙局(NASA)のロケット開発費用の3分の1の水準だ。
ベンチャー企業の若いエンジニアが、ロケットエンジン・ロケット本体・電子装備を全て独自に製造し、価格バブルを破壊した。
民間の革新能力が、惰性に陥ったNASAを圧倒したわけだ。

漢陽大学の金慶敏(キム・ギョンミン)教授は
「航宇研も、民間企業との協力を拡大すべき。
研究要員を民間企業に積極的に派遣し、核心となるプロジェクトに関しても思い切って民間に任せるべき」
と語った。




朝鮮日報 記事入力 : 2012/05/25 13:55
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/05/25/2012052501283.html



韓国型ロケット、2021年に打ち上げられるのか?
予算は大幅減、人材も足りず

専門家ら「実現の可能性に疑問」

宇宙ロケット「羅老号」の1回目の打ち上げを3カ月後に控えた2009年5月28日。
大田の韓国航空宇宙研究院(航宇研)で「韓国型宇宙ロケット開発戦略」シンポジウムが開催された。
この席で、当時の朴政柱(パク・チョンジュ)航宇研発射体系事業団長は
2010年から韓国型ロケットの開発に着手し、18年には独自の技術で打ち上げに成功する
という計画を発表した。

韓国型ロケットは全長45メートル、重量200トン級で、重さ1.5トン級の実用衛星を運搬できる。
重さ100キロ程度の科学衛星を打ち上げる2段式ロケットの羅老号に比べ、推進力が2倍ほど上回る3段式ロケットだ。
この韓国型ロケットの開発にかかる予算は、1兆5500億ウォン(約1040億円)規模。
これは羅老号開発予算の3倍に当たる。

しかし、羅老号の打ち上げが2回連続で失敗したことを受け、国会は関連予算を大幅に削減した。
このため、打ち上げの目標時期は18年から21年へと3年延期された。

だが、専門家たちは「21年」という目標の実現にすら疑問を投げ掛けている。
ポイントは
「誰が製造するのか」
という点だ。
韓国政府の計算によると、韓国型ロケットの開発に必要な専門要員は1000人規模
現在、航宇研などが保有するロケット関連の専門要員は400人にも満たない。
教育科学技術部(省に相当、以下教科部)の金昌経(キム・チャンギョン)第2次官(科学担当)は昨年11月9日、国会教育科学技術委員会で
「航宇研だけの力では韓国型ロケットの開発は無理だ、というのが教科部の判断」
と答弁した。

1000人の開発要員を集めるには、追加で600人の人材が必要になる。
教科部は産業界や大学の人材を最大限活用する考えだ。
しかし、航宇研がロケット開発のほぼ全ての過程を独占してきた構造によって、韓国の企業や大学など民間には適切な人材がいないのが実情だ




朝鮮日報 記事入力 : 2012/05/25 13:53
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/05/25/2012052501278.html

韓国のロケット技術はなぜ遅れているのか

1段目ロケット用の液体燃料エンジン開発を独自推進
ウクライナから推力30トン級エンジンの設計図取り寄せる


宇宙ロケット「羅老号」の打ち上げ失敗を2度も経験した韓国は、苦心の末に初歩的なレベルのロケットエンジンを独自開発したが、今度はロシア側の協力を得られず、性能試験すらできずにいる。
ロシアが、ロケットエンジンをテストするのに必要な地上燃焼試験施設の使用を拒んでいるからだ。

これまでロシアに依存していた羅老号(KSLV1)開発の失敗を教訓として、韓国は2021年までに独自技術で韓国型宇宙ロケット(KSLV2)を開発する計画を立てた。
しかし、韓国型ロケットの開発事業に参加できなくなったロシアは、自国にある燃焼試験場の使用許可を出さずにいる。
羅老号に続き、独自に開発したロケットまでもロシアに振り回され、序盤から難航しているわけだ。

当初韓国は、羅老号開発の過程でロシアからの技術移転を期待した。
しかしロシアは06年、羅老号の1段目ロケットの技術を移転せず、完成品だけを引き渡すと立場を変えた。
液体燃料を用いる1段目ロケットは、羅老号を打ち上げる上で最も大きな役割を果たす中心部分に当たる。
1段目ロケットの技術を確保できなければ、次の韓国型ロケットの開発も不透明になる。

このため韓国政府や航空宇宙研究院(航宇研)は、代案を模索した。
航宇研は、苦労してウクライナから推力30トン級のエンジンの設計図を取り寄せた。
航宇研の研究員らはこれを基に、エンジンを構成する中心パーツの燃焼器・ガス発生器・ターボポンプを生産することに成功した。
単位部品レベルでは、韓国国内で性能試験を終えた。
部品を全て組み立てて性能試験に成功すれば、これをアップグレードして1段目ロケットを製造することができる。

ところが、30トン級エンジンはまだ性能が検証できていない状態だ。
韓国には、このレベルのエンジンをテストできる施設がない。
航宇研は、ロシア側の支援を期待していた。
08年4月、当時の白鴻悦(ペク・ホンヨル)航宇研院長は
「ロシアは、ロケット技術は移転しないが、燃焼試験のような間接的な協力は得られるだろう」
と語っていた。
羅老号の開発中、韓国国内に地上燃焼試験場を建設しなかったのも、ロシアを信じたからだ。

ロシアは、羅老号の後継ロケットについても、自分たちが製造を担当すると主張した。
数千億ウォン(1000億ウォン=約67億円)もの収益を得られる良いチャンスだからだ。
08年にロシア連邦宇宙庁との会議に参加したある専門家は
「ロシアは、イタリアのVEGAロケットに搭載されている液体ロケットエンジンもロシアが提供した、と韓国側を説得した」
と語った。
しかしVEGAロケットに搭載されているエンジンは、羅老号のように完成品の形で売り渡したもので、技術を移転したわけではなかった。

そこで韓国がロシアを排除し、独自開発に乗り出すと、ロシアは地上燃焼試験場の使用を拒んだ。
航宇研のある関係者は
「地上燃焼試験場は、金さえ出せばいつでも使用できたのに、後継ロケットの開発事業にロシアが参加できなくなったため、燃焼試験場を使わせてもらえなくなったと聞いている」
と語った。

ロケットエンジンを一つ開発するためには、2万秒以上の地上燃焼試験を行わなければならない。
ロシアのフルニチェフ社は、羅老号の1段目ロケットエンジンについて、計120回、2万6892秒の燃焼試験を行った。
それにもかかわらず羅老号は、2010年の2回目の打ち上げに失敗した。

韓国が宇宙ロケット開発に乗り出してから15年が過ぎた今でも、韓国国内には大型ロケットエンジン用の地上燃焼試験場がない。
推力10トン級の小型エンジンの燃焼試験場があるだけ(のみ)だ。
韓国型ロケットに搭載される推力75トン級エンジンの試作品も、出力を大幅に減少させて試験を行わなければならない。

趙辰洙(チョ・ジンス)漢陽大学教授(機械工学)は
「最初から独自開発を進めていれば、当然、韓国国内に燃焼試験場を建設していただろう」
と語った。
別のロケット専門家は「ロシアが立場を変えたことで、数年が無駄になった」と語った。

航宇研は、15年までに3700億ウォン(約248億円)を投じ、羅老宇宙センターに地上燃焼試験場を建設する計画を打ち立てた。
しかし、予算が確保できず、足踏み状態のままだ。
今年10月に予定されている羅老号の3回目の打ち上げにも失敗した場合、ロケット開発に対する懐疑論が噴出しかねない。


つまり、人がいない、予算がない、施設がない、というわけである。
巨大プロジェクトをコツコツと時間をかけてコツコツ仕上げていくという気風がない。
向こう受けを狙って、他国から一気に設計図を取り寄せて作る、といった安易な方法しかとれないようである。
2021年なら十分に北朝鮮はミサイル打ち上げに成功しているだろう。
そこからコピーできれば幸いなのだが。




朝鮮日報 記事入力 : 2012/06/04 11:06
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/06/04/2012060400962.html

アリラン5号、年内の打ち上げ不透明に

 曇りの日や夜間でも地上を観測できる多目的実用衛星「アリラン5号」を年内に打ち上げ、全天候衛星観測システムを備えるという韓国の計画が、ロシアに足を引っ張られている。
 打ち上げの承認権を持つロシア政府が、1年近くにわたりアリラン5号の打ち上げ許可を出さないためだ。
 発射遅延に伴う補償金を要求できる条項があるものの、決着までに時間がかかり、すでに現地の打ち上げ代行企業に打ち上げに必要な費用190億ウォン(約13億円)の半分以上を支払っているため、どうにもできない状況だという。

 教育科学技術部(省に相当)の李周浩(イ・ジュホ)長官は1日、ロシア・モスクワで韓国人記者団と懇談会を開き
 「ロシア連邦宇宙局に今年下半期のアリラン5号の打ち上げを要請したが、確答を得られなかった」
と打ち明けた。
 李長官は先月30日から3日間の日程で、ロシア連邦宇宙局や人工衛星打ち上げロケット「羅老号」の1段目ロケットを手掛けたクルニチェフ国家研究生産宇宙センターなどを訪れた。

 韓国航空宇宙研究院が2400億ウォン(約159億円)を投じて開発したアリラン5号は、電子ビームを照射して地形の変化を識別する高性能の映像レーダーを搭載している。
 これまでに開発されたアリラン2号、3号と違い、悪天候や夜間でも地上を観測できるのが特徴だ。

 航空宇宙研究院は2007年、ロシアとウクライナの合弁企業「ISCコスモトラス」と190億ウォンでアリラン5号の打ち上げ代行契約を結んだ。
 ロシア軍から買い入れ、改造したロケットに搭載し、昨年8月にロシアのヤースヌイ宇宙基地から打ち上げる計画だったが、ロシア国防省は現在まで打ち上げを許可していない。

 教育科学技術部の関係者は
 「ロシア政府は打ち上げに反対している最中に『私たちが独自に開発したロケットを購入すれば、半年以内の打ち上げを実現する』
と提案してきた。
 結局は金の問題だろう。
 コスモトラスがまだ打ち上げを取りやめたわけではないため、損害賠償を請求すれば、打ち上げそのものが不可能になりかねない」
と話した。




朝鮮日報 記事入力 : 2012/06/05 09:02
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2012/06/05/2012060500543.html

【社説】韓国独自のロケット開発を実現するには

 韓国の多目的実用衛星「アリラン5号」を今年中に打ち上げる計画が頓挫する危機に陥っている。
 韓国航空宇宙研究院は2007年、ロシアとウズベキスタン、カザフスタンによる合弁企業「コスモトラス」との間で締結した契約に基づき、ロシアのロケットにアリラン5号を搭載し、昨年8月にロシアの宇宙基地から打ち上げる計画だった。
 ところが、ロシア政府はこれまで、明確な理由を示さず発射の承認を延期し続け、先週ロシアを訪問した教育科学技術部(省に相当)の李周浩(イ・ジュホ)長官が今年下半期中の打ち上げを要請したのにもかかわらず、明確な答えを示さなかったという。
 一方、ロシア政府は新たに開発した別のロケットを韓国が購入したら、6カ月以内にアリラン5号を打ち上げるという逆提案をしたとのことだ。

 韓国は09年と10年の2回にわたり、ロシアから導入した第1段ロケットに、韓国で開発した第2段ロケットを組み合わせるという形の「羅老号」を打ち上げたが、2回とも失敗に終わった。
 ロシアは当時、韓国から2億ドル(現在のレートで約157億円)を受け取ったが、開発した後打ち上げ実験を一度も行っていないロケットを韓国に提供していた。
 またロシアは、01年に了解覚書(MOU)を締結した際、中心的な技術を韓国に移転する約束をしたが、その後約束を破り、完成品を購入するよう要求した前歴がある。

 宇宙技術とは、電気や電子、超精密機械工学、新素材、極限環境工学など、数多くの最先端技術が凝縮された分野だ。
 とりわけ、人工衛星を搭載し軌道に乗せるロケットの技術は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)のような兵器の開発に直結するため、軍事目的でのロケット技術の売買はミサイル関連技術輸出規制(MTCR)によって規制されている。
 ロケット先進国が後発国に対する技術移転に簡単に応じるケースはほとんどない。

 韓国は21年までに、独自のロケットを開発するという目標を掲げている。
 だが、特定の政策研究所や一部の省庁があらゆる問題に大きな影響を与えてきた現在の体制では限界がある。
 今月17日、アリラン3号を打ち上げた日本のH2Aロケットを製作したのは、三菱重工業やNEC、東芝など、力のある民間企業だ。
 また、日本政府傘下の宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、全体のシステムを設計した後、民間企業を支援するという役割を果たした。
 韓国も世界レベルの民間企業や研究所、大学などの力を最大限活用したロケット開発システムから構築する必要がある。






_